サマータイム
2005年 12月 18日
-季節-
「いま!季節は夏!夏と言えば青い空!」
うれしそうにヒュム戦が、ビシッと指さす先にはと~っても晴れた空。
「そして、輝く太陽!」
ビシッと指さす先には目が痛くなるような輝きの太陽。
「そして、白い雲!」
ビシッと指さす先には綿菓子のようにもこもこの雲。
「そして、海!」
ビシッと指さす先には小波の打ち寄せる海岸。
「そして、砂浜!」
ビシッと指さす先には白い砂の敷き詰められた砂浜。
「とくれば、答は!?」
ビシッと指さす先には!
・
・
・
完全武装でたたずむ仲間たち。
陽射しにチリチリと焼け込む鎧や革甲。
見てるだけでも暑苦しい。
「……」
ガックリと膝をつくヒュム戦。
「なぜ?」
滝のように流れる涙。
「どして?」
問いかけるヒュム戦は、一人海水パンツ姿。
脇にかかえてるのはビーチボール。
足元に転がってるのはスイカ。
そして波打ち際に見えるのは…ゴムボート。
「…」
顔を見合わせるDE騎士たち。
「海岸集合といわれたら…」
「普通はこっちだと思うわぁ」
「んー、だなぁ」
「ふつうはねー」
「おもうよー」
うんうんとうなずき合う。
「むー」
さらにドーっと涙を流すヒュム戦。
素直に「海で遊ぼう」と誘えなかった自分が悲しい。
「でも…せっかく来たんだから少しぐらい…」
あきらめきれないヒュム戦。
「この格好でか?」
両手を広げて自分の装備を示すDE騎士。
白銀の鎧に剣と盾。
兜はかぶってないけど、これで海遊びはちょとツライ。
「しずむねー」
「ぶくぶくー」
おぼれてるように両手をふるドワバウ・スミス。
「んー、どうするぅ?」
とオーク戦。
「せっかく来たんだからぁ」
「!」
パッと明るくなるヒュム戦。
「狩りして帰るわぁ」
「…」
ズーンと暗くなるヒュム戦。
「ヒュムさんはー?」
「どうするのー?」
とドワバウ・スミス。
「一人であそぶぅ?」
「…着替える…」
ガクーッと肩を落として荷物の方へと歩いてくヒュム戦。
「あぁはははは」
その後を笑って追いかけるヒュムメイジ。
「いいわぁ、つきあったげるぅ」
ヒュム戦の背をパーンと叩く。
「…」
「たまには海で遊ぶのもいいねっ!」
言うなり服を脱ぎ出すヒュムメイジ。
みんなが止める間もなく、あっというまに下着姿になる。
黄と黒のトラジマビキニ。しかも「超」がつきそう。
「お、おい」
慌てて視線をそらせるヒュム戦。
「あははははは、心配ないよぉ。これ水着ぃ」
笑うヒュムメイジ。
「え?」
「昨日ヒュムさん集合場所説明しながらウキウキしてたにゃ。どうせこんな事だと思ったから、下に着てきたのっ」
長い付き合いは伊達じゃない。
-せくしぃ~-
「これ、今年一押しのデザインなのぉ」
そういえば、なんだか今年はトラがすごいらしい。
「アタシ脱いだらすごいかなぁ。セクシーぃ?」
少ししなってポーズなどとってみせる。ふるふると揺れるお尻。
隠れてる面積が少ないから、あちこちこぼれそう。
「あ、その…」
真っ赤になって照れてるヒュム戦。
「んー、おれも着てるぅ」
とオーク戦。
ガシャガシャと鎧を脱ぐ。
あらわれたのは、筋肉ムキムキボデイと、ヒュムメイジのよりもまだきわどい黒のビキニパンツ。
まあ、オークはナニがナニなので、こぼれ出る心配はないけど…。
ギシギシと筋肉を浮かび上がらせてポーズを取るオーク戦。
「んー、セクシー?」
と聞かれても
「あはは…」
答えようがない。
「あー、ボクもー」
「きてるのー」
とドワバウ・スミスもチュニックを脱ぐ。
下に着てたのは白黒横縞模様、肘と膝まであるレトロデザインのワンピース。
「おそろいだね」
とヒュム戦。
「うん、ここがねー」
「ちがうのー」
互いに指さし合うドワバウ・スミス。
よく見れば、ドワバウ・スミスでは白黒縞の順番が違う。
ドワバウのは白で始まり、スミスのは黒で始まってる。
以外はまったくおんなじ。
「「せくしー?」」
二人して小首を傾げて見上げる姿に、うんうんとうなずくヒュム戦。
意味は少し違うけど。
「みんな同じ事考えてた…!」
シュピンとDE騎士を振り向くヒュムメイジ。
同時にヒュム戦、オーク戦、ドワバウ・スミスも振り向く。
「!」
ヒュム戦たちがワイワイやってる間にと、こっそり鎧を脱ぎかけてたDE騎士の手が止まる。
結局みんな着て来てたのだ。
「なにを見ている!」
集中する視線に、頬など染めるDE騎士。
「んにゃ~。DE姉はどんなの着てきたのぉ?」
コクコクとうなずく一同。
「…普通だ」
開き直って脱ぐDE騎士。
「せくしー?」
「普通だ!」
そして現れたのは。
「…」
言葉を失うヒュム戦。
白。DE騎士の、出てるトコは出てるけど出てないトコは出てないという微妙なボディーを白いワンピースの水着が包んでる。
「それDE姉の趣味ぃ?」
「いや、服屋で勧められた。今年の新作だと言っていたんだが…」
『白いワンピースの水着』
それは、アデンの歴史上、もっとも攻撃力を持つ装備と言われてる。
その昔DE神殿騎士団一個中隊が一瞬にして鼻血の海に沈んだ、という伝説さえある…らしい。
「…」
長身のダークエルフに白いワンピース。
普段口数少ない正統派騎士に白いワンピース。
盾で犬を叩きまくるDE騎士に白いワンピース。
…なんか…いい。
「…」
DE騎士は白いワンピースのアレを知ってるのだろうか、知らないのだろうか。
つい気になって、つい見つめてしまうヒュム戦。
「じろじろ見るな!」
ズゴム!
ヒュム戦の顔面に盾が叩き込まれる。
鼻血と共に吹っ飛んでくヒュム戦。
「ヒュムさん、知ってるのぉ?」
根性で立ち上がり戻ってきたヒュム戦へ、ヒュムメイジがささやく。
「今の白い水着って、昔のみたいに透けないのよぉ」
「え゛」
「水に入っても関係ないのぉ。あれはもう伝説なのぉ」
「へーそうなんだ、昔の白い水着って透けたんだ」
知らないフリするヒュム戦。
期待してなかったはずなのに。
なにも期待してなかったはずなのに
「知らなかったなぁ。ははは…」
なぜかショックは大きかった。
-遭遇-
「まずは、泳ぐよぉ!」
「「「「「おー」」」」」
ザバザバザバと海に走り込んでく六人。
ヒュム戦はスイスイと、我流の泳ぎ。
オーク戦はザッパンザッパンと、激しく波しぶき立てて。
DE騎士はス~イスイと神殿騎士正統泳法。
ヒュムメイジはプクプクと潜水専門。
ドワバウ・スミスはバチャバチャと浮き輪つけて。
その浮き輪は、もちろんヒュム戦が用意した物だ。
ちゃんとドワちゃんサイズ。
相変わらず、微妙なマメさを発揮してるヒュム戦。
小一時間も泳ぎ、まずヒュムメイジが砂浜に上がった。
「今日は海鮮バーベキューよぉ」
その背にはヒモでつないだ沢山の魚貝。
潜りながら捕ってたみたい。やっぱこちらもマメだ。
「手伝おう」
後を追って砂浜に上がるDE騎士。
「んー、手伝うぅ」
さらにオーク戦も追う。
と言っても、オーク戦の場合は自分の分がどのぐらいあるのか知りたいのだけど。
バッサァ。
その巨体が大波を立て、
「キャー」
近くにいたドワスミスが浮き輪ごとひっくり返る。
「ブクブクプク…」
ジタバタジタバタ…。
足だけが海面から出てる。
「あややや…」
大慌てで助けに泳ぐヒュム戦。
ジタバタともがいてる短い足をつかみ上げ、もう一度ひっくり返す。
「ミ゛ー…」
半泣きになってるドワスミス。
「大丈夫?」
とヒュム戦。
「からいー」
チョットばかり海水飲んじゃったみたい。
「すこし休もうか」
うなずくドワスミス。
波打ち際近くまでドワスミスを連れてくヒュム戦。
と、何気なくこちらを見たDE騎士が顔色を変えた。
いや、見てるのはもっと後。
「!」
ハッと振り返るヒュム戦。
ドワバウが…遠い!
さらに、その後に不自然な波。
するすると黒い影が近付いてく。
ドワバウは気付いてない。
「まずい!」
海へ飛び込むヒュム戦。
けど、遠い。
波打ち際へと駆けつけるDE騎士。
その手にはシッカリと盾。
けど、遠い。
「魔法は!?」
ドワスミスへと聞く。
「とおいのー、とどかないー」
とドワスミス。魔法の届く距離じゃない。
「まかせろぉ」
駆けつけるオーク戦。
ガシッ!
その手がドワスミスの頭をつかむ。
「やめんかー!!」
ズゴムッ!
オーク戦の後頭部に盾の角を叩き込むDE騎士。
「?」
不思議そうなオーク戦。
「こっちだろう!」
盾を渡すDE騎士。
「そうだぁ」
ブンッ!!
盾を投げるオーク戦。
いつもの投擲ポーズじゃない。
腕を横にムチのようにしならせ、腰を鋭くひねった素晴らしいサイドスロー。
パンッパンッ。
海面を跳ねて飛んでく盾。
そして。
ズパーン!
「んー、命中ぅ」
拳を握るオーク戦。
ブクブクブク…‥。
沈むヒュム戦。
「あぅ?」
首を傾げるオーク戦。
「おまえは、おまえは、おまえはぁー!!」
ボクボクボク!
どこからか現れた剣で、ガル戦の頭をひっぱたくDE騎士。
そんなコトしてる間にも、影がドワバウへ近づいてく。
ドワバウはまだ気付いてない。
間に合わない!
誰もがそう思ったとき。
「まかせたまえ」
男の声。駆け抜けていく影。
「う?」
ザバザバザバ!
素晴らしい勢いで海へ駆け込むその姿はブリーフをはいただけの裸同然だった。
「おい、そんな格好で」
止めるひまもなかった。
ババババババ!
男は、駆け込んだ勢いそのままに、一気にあっという間にドワバウまで泳いだ。
そして、男は驚いてるドワバウの寸前で潜った。
わずかにあって
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
異様な雄叫び。
同時に
ドドドオォーーン!!
巨大な水柱。
ヒューーーン。
DE騎士たちの頭上を吹っ飛んでく、巨大な影。
遠ーーーくの方へ
ペチャ
落ちた。
「…」
いったいどんな技を使ったのかと驚いてるDE騎士たち。
「ミーー」
一人ドワバウが混乱してる。
バシャバシャバシャ!
DE騎士たちの方へ戻ろうと一生懸命泳ぐけど、浮き輪つきだから、たいして進めない。
けど、すぐにドワバウの動きが止まった。
浮上してきたさっきの男が、浮き輪ごと抱え上げたのだ。
器用に立ち泳ぎで。
「?」
なんか、違和感を感じるDE騎士。
そのまま砂浜へと戻ってくる男。
-有名-
「んー、たすかったぁ」
とオーク戦。
「ありが…」
ドワバウを抱えて海から上がってきた男に礼を言おうとして、固まるDE騎士。
男は、裸だった。
はいてたはずのブリーフは、彼の下半身じゃなく、頭にあった。
「小さな子を一人にするのは危ないな。気をつけないと」
そう言ってドワバウをDE騎士へと渡す男。
ポタポタと海水を滴らせるブリーフの奥で目が優しく笑ってる。
「あ、ああ…」
受け取りながら、目をさまよわせるDE騎士。
とても男の顔…と言うよりはブリーフを直視できない。
といって下を見れば尚更目に入るモノがある。
渡されたドワバウも硬直してる。
「ぞれじゃあ」
シパッと敬礼して去っていく男。
「…」
ドワバウの恩人だけど、DE騎士は名を聞く気にはならなかった。
「変態仮面だぁ」
とオーク戦。
「アレが…」
名は聞いたことがある。いろんな噂と共に。
少し前に、ドワバウ・スミスも助けてもらったとかもらえなかったとか話してた気がする…。
「よく飛ぶんだぁ」
なんだか嬉しそうなオーク戦。
「そうか、アレがそうか…」
やはりアデンは広い、とDE騎士は思った。
-うぃんなー・ふらんくふると・はむ-
「んん?」
バーベキューの準備が出来て砂浜を見ると、男が走ってくる。
素っ裸で頭にブリーフ。珍しいファッション。
「ん~」
上下を繰り返すヒュムメイジの視線。
「やあ」
と片手を上げて挨拶して通り過ぎる男。
引き締まったお尻がキュッキュと小刻みに揺れながら去ってく。
「…こんなもンかなぁ」
親指と人差し指で、ある幅を作り、
ぷすり。
用意してたウィンナーの中から同じくらいの一本をフォークで突き刺して、焼き網へのせる。
ジュッと派手な音。
「うきゃっ!」
なんか遠くで悲鳴のような声がしたけど、気のせいだろう。
みんな変に疲れてたけど、お昼を食べたら元気になった。
食べ終わって後片づけをしてたヒュムメイジが重要なことに気付いた。
「着替えわすれたにゃ…」
「「「「!」」」」
その一言に、全員が凍り付いた。
「「「「「…」」」」」
みんな、下着替わりに水着を着て来て、着替えを持ってきてなかった。
-忘れ物-
「べたべたにゃ~」
「…」
「んー、べたべたぁ」
「きもちわるいのー」
「はりつくー」
町に帰り着いたとき、鎧の下の濡れた水着は汗と海水が中途半端に乾いていや~な感じになってた。
途中戦闘が無かったのは幸運。
「早くお風呂に入るのが正解ぃ~」
「そうだな」
「んー、明日はぁ」
「いつもの時間に、いつものところねぇ」
「でいいよー」
「ねー」
翌日の約束もそこそこに解散。五人はそれぞれに大慌てで部屋へ帰っていった。
ん?また五人?
その頃。
『だれかー、復活お願いできませんかぁー。シクシクシク…』
ヒュム戦は人気のない浜辺に一人浮いてた。
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
響く雄叫び。
「助けが必要かね」
『復活お願いしたいんですけど…』
「すまん、無い!」
『シクシクシク…』
「いま!季節は夏!夏と言えば青い空!」
うれしそうにヒュム戦が、ビシッと指さす先にはと~っても晴れた空。
「そして、輝く太陽!」
ビシッと指さす先には目が痛くなるような輝きの太陽。
「そして、白い雲!」
ビシッと指さす先には綿菓子のようにもこもこの雲。
「そして、海!」
ビシッと指さす先には小波の打ち寄せる海岸。
「そして、砂浜!」
ビシッと指さす先には白い砂の敷き詰められた砂浜。
「とくれば、答は!?」
ビシッと指さす先には!
・
・
・
完全武装でたたずむ仲間たち。
陽射しにチリチリと焼け込む鎧や革甲。
見てるだけでも暑苦しい。
「……」
ガックリと膝をつくヒュム戦。
「なぜ?」
滝のように流れる涙。
「どして?」
問いかけるヒュム戦は、一人海水パンツ姿。
脇にかかえてるのはビーチボール。
足元に転がってるのはスイカ。
そして波打ち際に見えるのは…ゴムボート。
「…」
顔を見合わせるDE騎士たち。
「海岸集合といわれたら…」
「普通はこっちだと思うわぁ」
「んー、だなぁ」
「ふつうはねー」
「おもうよー」
うんうんとうなずき合う。
「むー」
さらにドーっと涙を流すヒュム戦。
素直に「海で遊ぼう」と誘えなかった自分が悲しい。
「でも…せっかく来たんだから少しぐらい…」
あきらめきれないヒュム戦。
「この格好でか?」
両手を広げて自分の装備を示すDE騎士。
白銀の鎧に剣と盾。
兜はかぶってないけど、これで海遊びはちょとツライ。
「しずむねー」
「ぶくぶくー」
おぼれてるように両手をふるドワバウ・スミス。
「んー、どうするぅ?」
とオーク戦。
「せっかく来たんだからぁ」
「!」
パッと明るくなるヒュム戦。
「狩りして帰るわぁ」
「…」
ズーンと暗くなるヒュム戦。
「ヒュムさんはー?」
「どうするのー?」
とドワバウ・スミス。
「一人であそぶぅ?」
「…着替える…」
ガクーッと肩を落として荷物の方へと歩いてくヒュム戦。
「あぁはははは」
その後を笑って追いかけるヒュムメイジ。
「いいわぁ、つきあったげるぅ」
ヒュム戦の背をパーンと叩く。
「…」
「たまには海で遊ぶのもいいねっ!」
言うなり服を脱ぎ出すヒュムメイジ。
みんなが止める間もなく、あっというまに下着姿になる。
黄と黒のトラジマビキニ。しかも「超」がつきそう。
「お、おい」
慌てて視線をそらせるヒュム戦。
「あははははは、心配ないよぉ。これ水着ぃ」
笑うヒュムメイジ。
「え?」
「昨日ヒュムさん集合場所説明しながらウキウキしてたにゃ。どうせこんな事だと思ったから、下に着てきたのっ」
長い付き合いは伊達じゃない。
-せくしぃ~-
「これ、今年一押しのデザインなのぉ」
そういえば、なんだか今年はトラがすごいらしい。
「アタシ脱いだらすごいかなぁ。セクシーぃ?」
少ししなってポーズなどとってみせる。ふるふると揺れるお尻。
隠れてる面積が少ないから、あちこちこぼれそう。
「あ、その…」
真っ赤になって照れてるヒュム戦。
「んー、おれも着てるぅ」
とオーク戦。
ガシャガシャと鎧を脱ぐ。
あらわれたのは、筋肉ムキムキボデイと、ヒュムメイジのよりもまだきわどい黒のビキニパンツ。
まあ、オークはナニがナニなので、こぼれ出る心配はないけど…。
ギシギシと筋肉を浮かび上がらせてポーズを取るオーク戦。
「んー、セクシー?」
と聞かれても
「あはは…」
答えようがない。
「あー、ボクもー」
「きてるのー」
とドワバウ・スミスもチュニックを脱ぐ。
下に着てたのは白黒横縞模様、肘と膝まであるレトロデザインのワンピース。
「おそろいだね」
とヒュム戦。
「うん、ここがねー」
「ちがうのー」
互いに指さし合うドワバウ・スミス。
よく見れば、ドワバウ・スミスでは白黒縞の順番が違う。
ドワバウのは白で始まり、スミスのは黒で始まってる。
以外はまったくおんなじ。
「「せくしー?」」
二人して小首を傾げて見上げる姿に、うんうんとうなずくヒュム戦。
意味は少し違うけど。
「みんな同じ事考えてた…!」
シュピンとDE騎士を振り向くヒュムメイジ。
同時にヒュム戦、オーク戦、ドワバウ・スミスも振り向く。
「!」
ヒュム戦たちがワイワイやってる間にと、こっそり鎧を脱ぎかけてたDE騎士の手が止まる。
結局みんな着て来てたのだ。
「なにを見ている!」
集中する視線に、頬など染めるDE騎士。
「んにゃ~。DE姉はどんなの着てきたのぉ?」
コクコクとうなずく一同。
「…普通だ」
開き直って脱ぐDE騎士。
「せくしー?」
「普通だ!」
そして現れたのは。
「…」
言葉を失うヒュム戦。
白。DE騎士の、出てるトコは出てるけど出てないトコは出てないという微妙なボディーを白いワンピースの水着が包んでる。
「それDE姉の趣味ぃ?」
「いや、服屋で勧められた。今年の新作だと言っていたんだが…」
『白いワンピースの水着』
それは、アデンの歴史上、もっとも攻撃力を持つ装備と言われてる。
その昔DE神殿騎士団一個中隊が一瞬にして鼻血の海に沈んだ、という伝説さえある…らしい。
「…」
長身のダークエルフに白いワンピース。
普段口数少ない正統派騎士に白いワンピース。
盾で犬を叩きまくるDE騎士に白いワンピース。
…なんか…いい。
「…」
DE騎士は白いワンピースのアレを知ってるのだろうか、知らないのだろうか。
つい気になって、つい見つめてしまうヒュム戦。
「じろじろ見るな!」
ズゴム!
ヒュム戦の顔面に盾が叩き込まれる。
鼻血と共に吹っ飛んでくヒュム戦。
「ヒュムさん、知ってるのぉ?」
根性で立ち上がり戻ってきたヒュム戦へ、ヒュムメイジがささやく。
「今の白い水着って、昔のみたいに透けないのよぉ」
「え゛」
「水に入っても関係ないのぉ。あれはもう伝説なのぉ」
「へーそうなんだ、昔の白い水着って透けたんだ」
知らないフリするヒュム戦。
期待してなかったはずなのに。
なにも期待してなかったはずなのに
「知らなかったなぁ。ははは…」
なぜかショックは大きかった。
-遭遇-
「まずは、泳ぐよぉ!」
「「「「「おー」」」」」
ザバザバザバと海に走り込んでく六人。
ヒュム戦はスイスイと、我流の泳ぎ。
オーク戦はザッパンザッパンと、激しく波しぶき立てて。
DE騎士はス~イスイと神殿騎士正統泳法。
ヒュムメイジはプクプクと潜水専門。
ドワバウ・スミスはバチャバチャと浮き輪つけて。
その浮き輪は、もちろんヒュム戦が用意した物だ。
ちゃんとドワちゃんサイズ。
相変わらず、微妙なマメさを発揮してるヒュム戦。
小一時間も泳ぎ、まずヒュムメイジが砂浜に上がった。
「今日は海鮮バーベキューよぉ」
その背にはヒモでつないだ沢山の魚貝。
潜りながら捕ってたみたい。やっぱこちらもマメだ。
「手伝おう」
後を追って砂浜に上がるDE騎士。
「んー、手伝うぅ」
さらにオーク戦も追う。
と言っても、オーク戦の場合は自分の分がどのぐらいあるのか知りたいのだけど。
バッサァ。
その巨体が大波を立て、
「キャー」
近くにいたドワスミスが浮き輪ごとひっくり返る。
「ブクブクプク…」
ジタバタジタバタ…。
足だけが海面から出てる。
「あややや…」
大慌てで助けに泳ぐヒュム戦。
ジタバタともがいてる短い足をつかみ上げ、もう一度ひっくり返す。
「ミ゛ー…」
半泣きになってるドワスミス。
「大丈夫?」
とヒュム戦。
「からいー」
チョットばかり海水飲んじゃったみたい。
「すこし休もうか」
うなずくドワスミス。
波打ち際近くまでドワスミスを連れてくヒュム戦。
と、何気なくこちらを見たDE騎士が顔色を変えた。
いや、見てるのはもっと後。
「!」
ハッと振り返るヒュム戦。
ドワバウが…遠い!
さらに、その後に不自然な波。
するすると黒い影が近付いてく。
ドワバウは気付いてない。
「まずい!」
海へ飛び込むヒュム戦。
けど、遠い。
波打ち際へと駆けつけるDE騎士。
その手にはシッカリと盾。
けど、遠い。
「魔法は!?」
ドワスミスへと聞く。
「とおいのー、とどかないー」
とドワスミス。魔法の届く距離じゃない。
「まかせろぉ」
駆けつけるオーク戦。
ガシッ!
その手がドワスミスの頭をつかむ。
「やめんかー!!」
ズゴムッ!
オーク戦の後頭部に盾の角を叩き込むDE騎士。
「?」
不思議そうなオーク戦。
「こっちだろう!」
盾を渡すDE騎士。
「そうだぁ」
ブンッ!!
盾を投げるオーク戦。
いつもの投擲ポーズじゃない。
腕を横にムチのようにしならせ、腰を鋭くひねった素晴らしいサイドスロー。
パンッパンッ。
海面を跳ねて飛んでく盾。
そして。
ズパーン!
「んー、命中ぅ」
拳を握るオーク戦。
ブクブクブク…‥。
沈むヒュム戦。
「あぅ?」
首を傾げるオーク戦。
「おまえは、おまえは、おまえはぁー!!」
ボクボクボク!
どこからか現れた剣で、ガル戦の頭をひっぱたくDE騎士。
そんなコトしてる間にも、影がドワバウへ近づいてく。
ドワバウはまだ気付いてない。
間に合わない!
誰もがそう思ったとき。
「まかせたまえ」
男の声。駆け抜けていく影。
「う?」
ザバザバザバ!
素晴らしい勢いで海へ駆け込むその姿はブリーフをはいただけの裸同然だった。
「おい、そんな格好で」
止めるひまもなかった。
ババババババ!
男は、駆け込んだ勢いそのままに、一気にあっという間にドワバウまで泳いだ。
そして、男は驚いてるドワバウの寸前で潜った。
わずかにあって
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
異様な雄叫び。
同時に
ドドドオォーーン!!
巨大な水柱。
ヒューーーン。
DE騎士たちの頭上を吹っ飛んでく、巨大な影。
遠ーーーくの方へ
ペチャ
落ちた。
「…」
いったいどんな技を使ったのかと驚いてるDE騎士たち。
「ミーー」
一人ドワバウが混乱してる。
バシャバシャバシャ!
DE騎士たちの方へ戻ろうと一生懸命泳ぐけど、浮き輪つきだから、たいして進めない。
けど、すぐにドワバウの動きが止まった。
浮上してきたさっきの男が、浮き輪ごと抱え上げたのだ。
器用に立ち泳ぎで。
「?」
なんか、違和感を感じるDE騎士。
そのまま砂浜へと戻ってくる男。
-有名-
「んー、たすかったぁ」
とオーク戦。
「ありが…」
ドワバウを抱えて海から上がってきた男に礼を言おうとして、固まるDE騎士。
男は、裸だった。
はいてたはずのブリーフは、彼の下半身じゃなく、頭にあった。
「小さな子を一人にするのは危ないな。気をつけないと」
そう言ってドワバウをDE騎士へと渡す男。
ポタポタと海水を滴らせるブリーフの奥で目が優しく笑ってる。
「あ、ああ…」
受け取りながら、目をさまよわせるDE騎士。
とても男の顔…と言うよりはブリーフを直視できない。
といって下を見れば尚更目に入るモノがある。
渡されたドワバウも硬直してる。
「ぞれじゃあ」
シパッと敬礼して去っていく男。
「…」
ドワバウの恩人だけど、DE騎士は名を聞く気にはならなかった。
「変態仮面だぁ」
とオーク戦。
「アレが…」
名は聞いたことがある。いろんな噂と共に。
少し前に、ドワバウ・スミスも助けてもらったとかもらえなかったとか話してた気がする…。
「よく飛ぶんだぁ」
なんだか嬉しそうなオーク戦。
「そうか、アレがそうか…」
やはりアデンは広い、とDE騎士は思った。
-うぃんなー・ふらんくふると・はむ-
「んん?」
バーベキューの準備が出来て砂浜を見ると、男が走ってくる。
素っ裸で頭にブリーフ。珍しいファッション。
「ん~」
上下を繰り返すヒュムメイジの視線。
「やあ」
と片手を上げて挨拶して通り過ぎる男。
引き締まったお尻がキュッキュと小刻みに揺れながら去ってく。
「…こんなもンかなぁ」
親指と人差し指で、ある幅を作り、
ぷすり。
用意してたウィンナーの中から同じくらいの一本をフォークで突き刺して、焼き網へのせる。
ジュッと派手な音。
「うきゃっ!」
なんか遠くで悲鳴のような声がしたけど、気のせいだろう。
みんな変に疲れてたけど、お昼を食べたら元気になった。
食べ終わって後片づけをしてたヒュムメイジが重要なことに気付いた。
「着替えわすれたにゃ…」
「「「「!」」」」
その一言に、全員が凍り付いた。
「「「「「…」」」」」
みんな、下着替わりに水着を着て来て、着替えを持ってきてなかった。
-忘れ物-
「べたべたにゃ~」
「…」
「んー、べたべたぁ」
「きもちわるいのー」
「はりつくー」
町に帰り着いたとき、鎧の下の濡れた水着は汗と海水が中途半端に乾いていや~な感じになってた。
途中戦闘が無かったのは幸運。
「早くお風呂に入るのが正解ぃ~」
「そうだな」
「んー、明日はぁ」
「いつもの時間に、いつものところねぇ」
「でいいよー」
「ねー」
翌日の約束もそこそこに解散。五人はそれぞれに大慌てで部屋へ帰っていった。
ん?また五人?
その頃。
『だれかー、復活お願いできませんかぁー。シクシクシク…』
ヒュム戦は人気のない浜辺に一人浮いてた。
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
響く雄叫び。
「助けが必要かね」
『復活お願いしたいんですけど…』
「すまん、無い!」
『シクシクシク…』
by onigawala
| 2005-12-18 19:49
| ある冒険者達